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レース参戦記

Record Of Race Participation

≪初島を往復する46マイルの初島ダブルハンドレースは80艇を超えるエントリーがある人気の「プチ冒険」レース。 今年は夢の島からStray DogとStellaの2艇が参戦。
下記はそのStellaの参戦記です。 さてさて、その顛末は・・・(編)≫

たった二人で46マイルの距離を帆走る伝統のレース。
レースを終えた各艇にはそれぞれ必ずドラマがあり、帆走りきった後には強い絆が生まれるという。 一度は参加したいと願っていた。

今年28ftに換えたこともあり、先ずは雰囲気だけでもと云うつもりで、思い切ってエントリー。 前週の艇長会議も終え、いよいよWハンドへの挑戦が始まった。

今年のレースは助っ人S氏と参加するのだが、回航は来年コンビを予定しているStellaのバウマン、もう25年以上の付き合いのTと一緒だ。
Tはディンギーでは全日本や国体にも出場しているベテランセイラーだが、外洋レースは一度も経験していない。 うねりが激しいと船酔いも。 Tには外洋経験を積んでもらう事にして、手始めに逗子までの回航である。

6月23日、朝7時に夢の島を逗子に向け出港。

東京灯標までは全く順調だった。

羽田沖、いきなり10m/s近くの南が吹き出した。 そしてこの海域特有のチョッピーな波。
それでも川崎シーバースを予定通りに通過。

左にベイブリッジが見え始めた頃には雨も降り始めた。 風は益々上がり優に15m/s近くはある。 うねりが大きくなり、周期もだんだん狭まって波頭から飛ぶスプレーで目も開けられなくなった。

それでも怖いとか危険とかを感じる事は一切なかった。 いや、むしろこの海況を楽しんでいる気にさえなっていた。

しかし観音崎を超えた途端、状況は一変した。 一気にうねりが大きく盛り上がりだしたのだ。 「今日地震でもあって津波が襲ってきたのかな」

そして一番難所の三角波が発生する剣崎に差し掛かった。

波を乗り越えようとするとスターンが反対側に押され、ボトムは下から持ち上げられる。
今まで感じたこともない不定期に襲ううねりと波。 前だけではなく横や後ろから加わる恐ろしいほどの力。
そんな事起きるわけがないと分かっていても「キールが折れるのでは、」「ラダーが捥ぎれるのでは、」等が頭によぎる。

やっと城ケ島大橋が見えてきた時には思わず安堵のため息が出た。

そろそろ変針しようとバウを城ケ島大橋に向けた時である。 辺りが真っ暗になるほどの巨大な波が真横から襲ってきた。
いきなり身体が吹っ飛ばされライフラインにぶら下る状態になった。 ペラが空転する音が聞こえる。

とっさにTを見るとコックピットに留まっていた。
ほんの数秒なのにまるでスローモーションを見る様にゆっくり船体が起き上がってきた。
「怖くなかったか?」「不思議とぜんぜん怖くなかったですよ。 ただオイルスキンの間から海水が流れてきて冷たかった。」

逗子までは難しいと判断し、そのまま三崎「うらり」に入港。レース当日まで繋留して直接スタート地点に向かう事にした。

その後も吹き続けた強風のため翌々日25日の初島ダブルハンドはノーレース・・・。僕らのWハンドは終了した。

≪やはり「ドラマ」があったようですね。
横倒しの時はジャックラインにハーネスをきちんと繋いでいたとのことでした。(編)≫